異常論文を読んだ
異常論文
先鋭的なアイデアを架空論文の形で提示して話題を呼び、増刷なったSFマガジンの特集を書籍化。新たに十数篇の書き下ろしを追加
Hayakawa Online
論文形式でいろんな作者の短編が読める本。論文形式といっても、ガチなやつから「スライドと注」、「注のみ」の作品など幅広い。
頭に収録されている作品はAmazonのサンプルで読めてしまう。
個々の作品の感想
気に入った作品をピックアップして書く。
決定論的自由意志利用改変攻撃について
ラプラスの悪魔を認めるような世界と、自由意志を共存させたらどうなるのかというのを突き詰めて考えたような作品。
普通の人が何となく思いついても途中でよくわからなくなりやめてしまうような思考を数学で突き進めたらこうなるのかという面白さがある。
数学弱者なのでよくわからない部分もあったけど、その辺は雰囲気で読み進められる。
僕のはサンプルで全文読めました。https://t.co/uaX0ze0XGH
— EnJoe140で短編中 (@EnJoeToh) October 19, 2021
これがサンプルで全部読めるのやばい。
空間把握能力の欠如による次元拡張レウム語の再解釈 およびその完全な言語的対称性
一番おもしろかった。架空の言語を架空のデバイスで拡張して起きた架空の変化の話。
理屈、分析、想像力、百合要素が詰まってる。読むべき。
これがサンプルで全部読めるのやばい(2度目)。
『多元宇宙的絶滅主義』と絶滅の遅延──静寂機械・遺伝子地雷・多元宇宙的モビリティ
単純に反出生が出てくるから好きなのもあるし、話の規模のデカいから楽しい。
樋口一葉の多声的エクリチュール──その方法と起源
樋口一葉の作品について分析していく作品。途中までは史実に基づいて書いている気配があるが、どこからかフィクションに迷い込んでいて不思議な感覚になる。
四海文書(注4)注解抄
「四海文書と呼ばれるノートについて分析した文書への注」という体で書かれた作品。
文書についての文書についての文書という構造な上に、注に注がついてて読む順番がわからなくなるが、少しずつ頭の中でストーリーが浮かび上がり真相に近づいていく感覚が面白い。
途中についている注については短ければ読み、長ければ文章順に読んでそのページに辿り着いたときに読めば良い感じに読める。
解説──最後のレナディアン語通訳
人工言語であるレナディアン語で書かれたアンソロジーへの解説。それぞれの作品が描かれた背景からストーリーが浮かび上がってくる。
異常論文ならではの設定のリアリティと、物語としての良さ両方があって面白い。
全体の感想
しょうじき頭が足りずよくわからないものも結構あったが、ノンフィクションとフィクションの境界が曖昧になるような異常論文ならではの感覚が楽しかった。
ベケット講解、ザムザの羽、オルガンのこと、無断と土あたりは理解できたら面白そうなのに全然頭がついていけてないのでそのうち読み返したい。